妖帝と結ぶは最愛の契り
「なにっ⁉」

 驚き、警戒した碧雲は青の炎に包まれながらも美鶴をつき飛ばす。

「かかりましたね! 残念でした。私は美鶴様ではありません!」

 してやったりと笑みを浮かべた美鶴は、直後狐の耳としっぽを持つ灯の姿になった。

 狐と狸の妖は化けるのが得意なのだそうだ。
 予知のことを話し、対策を練っていると灯が身代わりになると申し出た。
 そのとき初めて灯と香が変化するところを見たが、見た目だけは本当にそっくりで鏡でも見ているのだろうかと思ったほどだ。

 しかし身代わりは危険ではないかと美鶴は案じた。
 だが薬を飲まされることは分かっていたので、その薬さえ無くしてしまえば予知の未来は覆るはずだという双子の意見に小夜も同意したため、このような作戦になったのだ。

 一部始終を隠れて見ていた美鶴は、薬が使い物にならなくなったのを確認して安堵の息を吐く。

 予知は覆った。
 とにかく、これで腹の子が死んでしまうということは無さそうだ。

 だが、碧雲という脅威が去ったわけではない。
 もう一度気を引きしめようと息を吸い込んだ美鶴は、そのまま呼吸を止めてしまう。
 凍えそうなほどに冷たい感情が乗せられた金の瞳と、目が合ってしまった。

「まったく……薬で穏便に済まそうとしてやったというのに」

 淡々と呟く碧雲は軽く腕を振り灯の幻火を払う。
 幻火は幻を見せるらしいが、碧雲には効果がなかったらしい。
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