妖帝と結ぶは最愛の契り
「薬が使い物にならなくなったのでは仕方あるまい……生まれたらすぐ殺してやろう」
「っ⁉」

 今は殺せなくとも、結局殺すつもりなのは変わりないということだ。
 我が子の命が奪われる危険が去ったわけではないことに動悸が激しくなる。

(だめ、落ち着いて。少なくとも今は大丈夫よ)

 呼吸を整え、気力を奮い立たせる。

 弧月は儀式のためこちらには来られない。
 だが、いざというときにはどれほど大事な儀式であろうとも放り出して助けに来ると言ってくれた。

(弧月様は絶対に来て下さる。だからそれまで冷静に対処しなければ)

 強く優しく愛しい夫を思い浮かべ、心を強く持つ。
 未だにあれほど素晴らしい帝の唯一の妻が自分で本当にいいのかと思うことはあるが、その素晴らしい妖帝が言うのだ。

『美鶴、俺の妻はそなただけだ』

 と。

 なればその妻に相応しくあろう。
 完璧にとはいかずとも、自身のすべてを持って弧月の隣に()れるよう尽力しよう。
 だから、恐ろしくとも負けるわけにはいかない。
 なにも出来ないか弱い赤子を殺そうなどとのたまう、卑怯な男などに!
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