妖帝と結ぶは最愛の契り
***

 清められた神聖なる紫宸殿にて雅楽が響き渡る。
 琵琶や楽箏(がくそう)(そう)する拍子に合わせ、(しょう)の高く澄んだ音が天から降り注ぐ光のように広がる。
 主旋律を奏でる篳篥(ひちりき)が耳に心地よい。

 束帯(そくたい)に身を包み儀式を進めていた弧月は、しかし内心不満たらたらであった。

(このような茶番は早く終わらせたいものだな)

 美鶴の予知のおかげでこれから起こることもある程度予測がついた。
 なればこそ、このような茶番に付き合いたいとは思わぬし、それならば美鶴の側にいて守りたいと思うのは当然のこと。

 何より美鶴以外の女を入内させるための儀式など茶番であろうともしたいとは思えなかった。
 むしろ美鶴にこそ正式に中宮となるための儀式を受けて欲しいと思う。
 身籠っている今は儀式などしていられないのだから仕方ないが、どうせなら美鶴のための儀式をしたかったという思いは無くならない。

 だが、そんな不満ばかりの儀式も半ばで終わりを迎える。

 藤峰が莢子を連れてくるはずの南庭へ出ると、明らかに物騒な様子の者達が紫宸殿を取り囲んでいた。
 その中には碧雲が都を出る際付いて行った者達の顔も見え、予測は確信へと変わる。
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