妖帝と結ぶは最愛の契り
 美鶴と出会った大門の火事も、藤峰と碧雲で仕組んだことだと白状した。

「大門の火事はもっと燃え広がる予定だったというのに。大火事になりその対処にお前が追われている間に内裏を乗っ取る計画だった。だというのに火事は早々に鎮火されてしまうし……」

 徐々に愚痴になってきている辺り、相当鬱憤を溜め込んでいたらしい。

(全く、そこまで溜め込むくらいならば我慢せず碧雲に付いて行けば良かっただろうが。その方がこちらとしても助かったというのに)

 悪態をつきそうになるのをため息で流す。
 同時に、やはりあの火事も碧雲の仕業だったのかと納得した。

「しかも火事の後、お前はいつの間にか今まで持たなかった妻を娶り、あろうことか子が出来てしまった。これ以上放置は出来ないという碧雲様のお言葉で今回やっとお前を妖帝の座から引きずり下ろす計画に至ったのだ」
「……放置できぬから。そんな理由で美鶴と我が子に手を出すのか?」

 それまで淡々と受け答えしていたが、妻と子のこととなると感情を抑えてはおけなくなる。
 怒りを揺らめかせた低い声が自然と口から出てしまった。

「なんだ、気付いていたのか。そうだ、碧雲様のお言葉ではあの異能持ちの平民は目障りなのだそうだ。そして、腹の子は処分しなければならぬとな」
「……ほう?」

 藤峰の言葉に、自分でも制御出来ぬ怒りが湧き上がる。
 碧雲が美鶴と子を害そうとしていると知っただけでも怒りが湧いてきたが、第三者の口から実際に言葉として聞くと腸が煮えくり返るほどの怒りを覚えた。
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