妖帝と結ぶは最愛の契り
「ぐっ……うぅ……」
「理解したならばもう良いだろう。後は取り調べまで大人しくしているがいい」

 淡々と告げると、弧月はまた青い炎を出し碧雲を包む。
 ただ、今度は熱いと騒がず朦朧とした様子でゆっくりと床に伏した。
 どうやら今回の炎は幻火だったらしい。

「余罪もありそうだ。藤峰共々しっかり調べ上げて罰しなければな」

 静かになった弘徽殿に弧月の呟きが響き、その姿が人のものとなる。
 ふさふさの耳としっぽがなくなり少々寂しく思った美鶴だったが、あのままでは小夜達が床にくっついてしまいそうだ。
 仕方がないと諦めた。

「美鶴、本当に大丈夫か?」
「え? はい、大丈夫ですよ」

 九尾の妖気に当てられなくとも襲われ連れ去られそうになったのだ。
 臨月の身では尚辛いだろうと心配されてしまう。

(確かに少し前から重苦しい辛さはあるけれど、臨月に入ってから度々感じたものと変わりはないし……)

 大丈夫だと思う。
 だが、少々休ませてもらった方がいいかもしれない、そう思ったときだった。

「うっ!」
「美鶴?」

 先ほどまでより強くなってきた辛さについ呻く。

「だ、大丈夫です」

 弧月に心配させないように笑顔を浮かべてみるが、また苦しい痛みにそれも歪んだ。
< 133 / 144 >

この作品をシェア

pagetop