妖帝と結ぶは最愛の契り
「でも、弧月様はちゃんと見つけて下さったではありませんか。無意識につけた印で、どこの誰が番になっているのかなど分からないというのに」

 しかも弧月は番の印の存在を知らなかったのだ。
 異能がその印の証と知らぬのに、ちゃんと見つけてくれた。

「私を見つけ、愛を教えてくださいました。そして、家族まで与えて下さったではありませんか」

 紅玉の瞳から赤子の寝顔へと視線を移す。
 安らかに眠る子の目は鬼の証である金だ。だが、髪は父親譲りなのか弧月と同じ白金である。
 柔らかな、口づけをしたくなるような頬を指先でちょいとつつき、幸せから自然と笑みが零れる。

「私を幸せにしてくださったのは弧月様です。“弧月様のせい”ではありません“弧月様のおかげ”で私は今幸せなのです」

 大事なのは今とこれからの未来なのだと美鶴は告げる。
 だから気に病まないで欲しい。
 気にせず、これからも自分と子を愛して欲しい。
 そんな願いを込めてまた美しい紅玉の目に視線を戻した。

 赤い瞳を縁取る睫毛が震え、喜びが込められた柔らかな表情が浮かぶ。
 眩しそうに細められた目の奥に映るのは憧憬の思い。

「美鶴は、強いな。……愛らしいとばかり思っていたが、強いそなたも愛おしい」

 弧月の大きな手が美鶴の髪を撫で、頬を包む。
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