妖帝と結ぶは最愛の契り
「あの、離した方が――っ⁉」
どう説明すればいいのか分からなかったが、とりあえず巻き込まれないうちに手を離した方がいいだろうと声をかけようとして気付く。
(風向きが、変わった?)
突風でも吹いたのだろうか。
突然焦げた臭いと熱風が美鶴と男を襲う。
「っ! なんだ⁉」
今まで以上に慌てた男は周囲を見回しぎょっとする。
美鶴も倣って男の視線の方へ目をやると、赤くうねる炎が見えた。
(嘘……火の回りが早すぎる)
風向きが変わったとはいえ先ほどまでこちらは風上だった。
しかも火元からは離れるように進んできたはず。
だというのにもう炎が見えるほど燃え移っているとは……どこか人為的なものを感じたが、今はそのようなことを考えているときではなかった。
「ひっ! もうこんなところに⁉」
悲鳴を上げた男は一瞬迷うそぶりを見せたが、すぐに決断したようだ。
「仕方ねぇ、反物だけでも今日の食い扶持は稼げる。じゃあな嬢ちゃん!」
自らに言い聞かせるように呟いた男は、言い捨てると美鶴の腕を離しどん、と肩を押した。
押された美鶴はよろめき尻もちをつく。
お荷物になると判断したのだろうが、押すことはないだろうと僅かに怒りが湧いた。
だが怒りの声を届ける前に男は走り去って行く。
どう説明すればいいのか分からなかったが、とりあえず巻き込まれないうちに手を離した方がいいだろうと声をかけようとして気付く。
(風向きが、変わった?)
突風でも吹いたのだろうか。
突然焦げた臭いと熱風が美鶴と男を襲う。
「っ! なんだ⁉」
今まで以上に慌てた男は周囲を見回しぎょっとする。
美鶴も倣って男の視線の方へ目をやると、赤くうねる炎が見えた。
(嘘……火の回りが早すぎる)
風向きが変わったとはいえ先ほどまでこちらは風上だった。
しかも火元からは離れるように進んできたはず。
だというのにもう炎が見えるほど燃え移っているとは……どこか人為的なものを感じたが、今はそのようなことを考えているときではなかった。
「ひっ! もうこんなところに⁉」
悲鳴を上げた男は一瞬迷うそぶりを見せたが、すぐに決断したようだ。
「仕方ねぇ、反物だけでも今日の食い扶持は稼げる。じゃあな嬢ちゃん!」
自らに言い聞かせるように呟いた男は、言い捨てると美鶴の腕を離しどん、と肩を押した。
押された美鶴はよろめき尻もちをつく。
お荷物になると判断したのだろうが、押すことはないだろうと僅かに怒りが湧いた。
だが怒りの声を届ける前に男は走り去って行く。