妖帝と結ぶは最愛の契り
(これは、口づけ……なのよね?)

 両親がしているところを見たことはないが、夫婦の営みとしてすることだといつだったか春音が教えてくれた。
 唇と唇を触れ合わせるのだと。そうして愛を確かめ合うのだと。

(愛を確かめ合う……? 私と主上が?)

 自分はお飾りの妻だ。
 主人と仕える者という関係に敬意などの好意的な感情はあるかもしれないが、愛情は違うだろうと思う。

 それなのに何故弧月はこのようなことをするのだろう?
 理由が分からなくて少し怖い。
 ……だが、優しい熱を与えてくれるこの口づけを嫌だとは思わなかった。

「はぁ……美鶴?」
「はっはい」

 ひとしきり触れ合って離れた弧月は、どことなく熱のこもった声音で美鶴を呼んだ。
 それが何やら恥ずかしくて、美鶴は動じながら返事をする。

「そなた、夫婦の営みは理解しているのか?」
「は、はい。……多分」
「多分?」
「あ、その……同じ(しとね)の上で共寝をするのはわかっているのですが、具体的なことは知らないと申しますか……」

 以前教えてくれた春音は共寝をすることまでは教えてくれたが、そこから先は『姉さんは本当に無知なんだから』と嘲笑するだけで教えてはくれなかった。

「そうか……」

 弧月は納得の声を上げると「すまない」と謝罪の言葉を口にし美鶴を褥の上に押し倒す。
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