妖帝と結ぶは最愛の契り
「無垢なそなたを散らすのは気が引けるが、既成事実を作っておかねばうるさい輩もいるのだ。……心配するな、優しくする。美鶴は俺に全てを任せれば良い」

 押し倒されたことに驚きはしたが、もとより弧月が酷いことをするとは思っていない。
 申し訳なさそうに眉を寄せる弧月に、美鶴は大丈夫だと微笑みを浮かべる。

「主上のお好きなようになさって下さい。私は貴方様にお仕えすると決めたのですから」
「っ!……全く、可愛いことを言う……」

 切なげに細められた目に、また熱が(とも)ったように見えた。
 美しい紅玉が鮮やかに色づいて、魅入ってしまうほど。

 その宝玉と共に口づけが降って来て……美鶴は夫婦の営みがどんなものなのかを知った。

***

「何か望みはあるか?」

 そう聞かれたのは夜も明けようかという頃。
 微睡(まどろ)みの中上体を起こした弧月が美鶴を見下ろすようにして告げた。

「望み、ですか?」
「そなたには今後予知の力で俺を支えてもらう。その褒美として欲しいものはないのか?」

 まさか褒美をもらえるとは思っていなかった美鶴はただ驚く。
 いらないと思っていた自分の異能を必要だと言い、居場所を用意してくれただけで充分だと思っていたというのに、更に褒美までくれるとは。
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