妖帝と結ぶは最愛の契り
 聞けば、小夜は美鶴の教育係も兼ねているらしい。
 内裏に住むというのに、内裏のことを何も知らないというのは困るだろうと弧月が采配(さいはい)してくれたのだそうだ。
 弧月の(はか)らいは素直に嬉しかったため、教育係ならばと納得したのだ。

 そうして教えられた様々なことは美鶴にとって驚きの連続だった。
 時雨のこともそうだが、何と弧月に妻は自分一人だけだというのだ。
 妖帝ともあろう者の妻が平民出の自分だけとは。あり得ない事実に本気で眩暈(めまい)がしたのを覚えている。

 だが、だからこそ更衣という妻の中では下の身分でありながら七殿の一つを賜ることが出来たらしい。

 どういったわけなのか詳しく聞くと、弧月は妖力が強すぎて子が望めないだろうと言われているそうだ。
 そのため、強い妖を産んでくれる姫達を自分に縛り付けるよりも有力な公卿と子を成して欲しいと望んだ。
 妖帝は妖力の強い者がなるのだから、と。

 そこにも美鶴は驚いた。妖帝は世襲ではなかったのかと。
 流石にそれくらいは平民でも知っていると思っていたと、その時も小夜に呆れられてしまったが。

 本当に自分は無知なのだなと恥じ入る思いで日々を過ごしている。
 そんな様子で小夜は呆れてばかりだったが、美鶴の予知の異能を目の当たりにすることで見方を改めたらしい。
 最近では教育係として厳しくありつつも、仕える主として敬い尊重されてるように感じることが増えた。
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