妖帝と結ぶは最愛の契り
 碧雲とは先代妖帝の子で、弧月を良く思わない重鎮達が今代の妖帝にと推している人物だ。
 少々傲慢で気性が荒い碧雲は、『弧月が治める(みやこ)になど住めぬ』などと言い現在は都から出て先代妖帝が建てた別荘に住んでいる。

 そのような相手の部下が自分の治めている都をうろついている。
 嫌な予感しかしないというものだ。

「奴等、明日大門(だいもん)付近で何やらことを起こすらしい。手下の一人に上手く近づけたこちらの手の者が『明日大門には近付くな』と言われたそうだ」
「大門か……」

 内裏(だいり)から真っ直ぐ整えられた大路(おおじ)の先にあるのが大門だ。
 塀で囲まれた都から出るための一番大きく立派な門だが、貴族が住まう場所からは離れている。

(俺に害を成そうというのであれば狙うべき場所ではないと思うが……何か裏があるのか?)

「明日大門には俺が詰める。内裏には小夜(さよ)を置いていくから、こちらで何かあれば連絡をくれ」

 女房として仕えてくれている白南風(しらはえ)小夜も時雨と共に弧月とは筒井筒の仲だ。
 小夜は山に(こも)る大天狗の親族で風を操る。都内であれば風に声を乗せ伝達することも出来るため、連絡手段としても優秀だ。

「ああ……」

 報告に相槌を打ちつつも、引っ掛かりを覚えて軽く眉を(ひそ)める。
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