妖帝と結ぶは最愛の契り
「美鶴様?」

 流石におかしいと思ったのか小夜が近付いて来る。

「ご、めんなさ……どうしても、受け付けなくて……」

 目じりに涙を溜めながらもなんとか絞り出すように答える。

「一体どうなさったというのですか? これではまるで――」

 焦りを含んだ声で心配してくれた小夜は、途中でぴたりと言葉も動きも止めてしまった。

「……小夜?」

 今度は美鶴の方が彼女を心配してしまう。
 突然止まってしまうなど、一体どうしたというのか。

「……そういえば、美鶴様はここに来てから月のものがありませんよね? 初潮がまだ、という事はありませんよね?」
「え? ええ……初潮は済んでますけど……」

 流石にこの年齢でそれはない。ただ、不定期だったのであまり気に留めていなかったのだが……。

「……医師(くすし)を呼びましょう」
「え? あ……」

 小夜は唐突に真面目な顔で言うと、美鶴の返事も聞かず動き出してしまった。
 取り残された美鶴は待っていることしか出来ず、その後も小夜や医師に言われるままになる。
 そうして一通りの処置を終えた医師は、神妙な面持ちで口を開いた。

「おめでとうございます。ご懐妊でございます」

 と……。
< 54 / 144 >

この作品をシェア

pagetop