妖帝と結ぶは最愛の契り
(何だ……? 胸の奥が騒めく)

 焦がれるような思い。そして焦燥。
 これは先ほど切燈台(きりとうだい)の灯りを見て感じたものと同じだ。

 明日大門で何かが起こる。
 それが自分にとっても一大事なことだと、この予兆が知らせてくれる。

「……俺も行こう」
「は? いや、大門は(おとり)で内裏に入り込む隙を突くためかもしれないだろう?」
「分かっている、だが行かねばならない気がするのだ。……小夜が内裏に残るなら、何かあればすぐ知らせが来るだろう?」
「まあ、お前なら連絡が来ればすぐに内裏に戻れるだろうが……」

 まだ少し渋っている時雨から視線を切燈台(きりとうだい)の小さな火に移す。
 自身の中にある焦燥に触れると、何かに呼ばれている気がした。
 今行動を起こさねば何か大事なものが消え去ってしまうかのような、そんな焦り。

 揺らめく火を紅玉の目に映しながら、弧月はもう一度告げた。

「もう決めた。明日、大門には俺も(おもむ)く」
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