妖帝と結ぶは最愛の契り
「……その、弧月様は双子と同じ狐の妖なのですよね? 本来の姿では、白金色の美しい毛並みをした耳としっぽがあると」
「……ああ、そうだな」

 二度ほど瞬きした弧月は“なんだ、そんなことか”とでもいうように頷く。
 だが、その辺りのことは少々複雑なのだと小夜に教えられた。

 妖の中でも最強の妖力を持つのは五種の鬼の一族で、みな金の目を持ちそれぞれ五行の力を操るそうだ。
 火鬼(ひおに)水鬼(みずおに)木鬼(きおに)金鬼(かなおに)土鬼(つちおに)
 時雨も水鬼の一族で、水を操るのだとか。

 中でも火鬼は特に妖力が強く、歴代の妖帝は火鬼が多いのだそう。
 先々代の妖帝も火鬼で、弧月の祖父に当たるらしい。
 先々代の妖帝の娘が妖狐の一族に降嫁し、生まれたのが弧月だそうだ。

 鬼ほどではなくとも妖狐の一族もかなりの妖力を持つ家系。
 鬼の血も受け継ぎ妖狐として生まれた弧月は、歴代の妖帝をもしのぐ妖力を持っていた。

 一番強い妖力を持つ者が妖帝となるため、弧月が帝になるのは当然のこと。
 だが、一部では狐が妖帝になるなど……と不満を抱く者もいるそうだ。

 弧月本人は気にしていないらしいが、そのせいで信用できる者が少ないのだと小夜は嘆いていた。

 そんな弧月に妖狐であることを確認し、あまつさえ――。
< 74 / 144 >

この作品をシェア

pagetop