妖帝と結ぶは最愛の契り
「美鶴! いつまで外に出ているの⁉ 早く終わらせて家の中の掃除も終わらせなさい!」
「……はい、母さん」

 母の厳しい声に呼ばれ、門前の掃除は軽く済ませ中に入る。
 母は自分をあまり外に出したがらない。
 呪われた異端の娘だから隠しておかなくてはならないのだそうだ。

「まったく、誰かに会ったりしてないだろうね? また予知だとか言って変なことを口走ったらもう一歩たりとも家からは出さないよ⁉」
「大丈夫よ母さん。予知をしても(うと)まれるだけだって分かってるから」

 叱る母に、美鶴は悲しげに返した。

(伝えても、予知で視たことを回避出来るわけではないもの)

 人でありながら予知能力という異能を持って生まれた美鶴だが、視た出来事を変えることまでは出来ない。
 役立たずな能力は誰にも歓迎されず、妖でもないのに不可思議な力を持つ異端の娘として近所では噂されていた。

 家が他の平民よりも裕福であったため、やっかみもあり呪われたのだと言う者もいる。

「もう母さん。朝からそんな大きな声を出して……また姉さんが何かしたの?」

 寝室の方から可愛らしく顔を出したのは妹の春音(はるね)だ。
 いつもより少しおめかしして、以前父から貰った桔梗柄の反物で作った小袖を着ている。
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