妖帝と結ぶは最愛の契り
「たしかに子は最優先だが、そなた自身が傷つくのも悲しいのだぞ?」
「あ……はい。申し訳ありません」

 言われて気付き、また謝罪する。

「はあ、もうよい。一人で行動はしないということだけは本当に守ってくれ」
「はい」

 素直に返事をした美鶴の頭を弧月は愛しむように撫でた。
 その優しい手に安らぎを覚えていると、ふいに弧月が「そういえば」と口を開く。

「小夜からも聞いたが、俺を介さなくとも予知の未来を変えられたそうだな? 腹の子の力ではないかと聞いたが……」
「はい、私はそうだと思っております」

 腹に手を当て、美鶴は大切な存在を思う。
 感覚という意味ではやはりまだ感じないが、そこに確かに存在しているともう知っている。

「そうか……どんな子が生まれるのだろうな。男か、女か。妖狐なのか、鬼なのか……もしくは、美鶴のように異能を持った人間ということもあり得るのか?」

 腹に添えた美鶴の手を包むように自分の手を乗せた弧月は、どんな子が生まれるのだろうかと予測を立てる。
 心配そうな色も見えるが、やはりどこか楽し気だ。

「妖力は感じるから、普通の人間ということだけは無さそうだが」
「そうなのですか? どのような子が生まれるのか、楽しみですね」

 見上げて微笑むと、穏やかな色合いの赤と視線が合う。
 額に口付けした弧月は、「そうだな」と笑みを返してくれた。
< 91 / 144 >

この作品をシェア

pagetop