妖帝と結ぶは最愛の契り
 穏やかな、幸せの時間。
 幸福の時を感じ、美鶴はもう一つ伝えたいと思っていたことを思い出した。

「あ、あの……」
「ん? 何だ?」

 伝えたい。伝えておきたいと思っているが、恥ずかしくてすぐには言葉に出来ない。

「そ、その……まだ、伝えていなかったと思いまして……」

 今回、小夜が弧月を想っていると聞いて嫉妬した。
 本当は違うとわかり、安堵した。
 その心の揺れは、美鶴が弧月を夫として想っているが故だ。

 黙って自分の言葉を待っていてくれている弧月に美鶴は意を決して告げる。

「弧月様……私、貴方様が好きです」
「っ⁉」
「はじめは私を助け、救いあげてくれた方で……だから心からお仕えしようとばかり考えておりました」

 だが、おそらく初めから別の意味で惹かれてもいたのだろう。
 強い意思が込められた紅玉の目に自分が映ったあの瞬間から。

「懐妊が分かり、弧月様に大切にしてもらっているうちに欲が出てきてしまいました。こうして弧月様に大切に扱われるのは自分だけがいい、他の女性を見ないで欲しいと思ってしまっていたようなのです」

 だから、双子から小夜のことを聞いたとき胸が騒めいたのだ。
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