妖帝と結ぶは最愛の契り
***
互いの思いを確かめ合い、大切な子を守り無事に産みたいと思う。
そう決意した美鶴は弘徽殿への引っ越しにも意欲的になれた。
畏れ多いとは今でも思うが、少しでも弧月の近くにいたいと思う。
それに、大切な我が子を守るのならば守ってくれる弧月の側にいた方がいいのだろう。
そうして引っ越しを進めつつも穏やかな日々を過ごしていたある日、状況が一変した。
胎動だろうか。
悪阻も少し落ち着き、下腹部に何か動きのようなものを感じるようになった。
その感覚を不思議に思いながらも慈しみの感情を育んでいた美鶴の元へ、珍しくばたばたと慌ただしい足音が近付いて来る。
「み、美鶴様!」
「重大な知らせがっ!」
肌寒くなってきたため、母屋の方でいつもの手習いをしていた美鶴は慌てて庇から入って来た二人の妖狐を見る。
「灯、香! そのように走るなどはしたないですよ!」
「で、でも」
「本当に重大なのです!」
小夜に窘められても必死な様子で話す二人に、美鶴は落ち着くよう声をかける。
「落ち着いて。何があったの?」
落ちつくよう殊更穏やかに話しかけると、ふさふさの狐耳をピンと伸ばした双子は居住まいを正し声を揃えて告げた。
『主上が、もう一人妻を迎えるらしいのです!』
互いの思いを確かめ合い、大切な子を守り無事に産みたいと思う。
そう決意した美鶴は弘徽殿への引っ越しにも意欲的になれた。
畏れ多いとは今でも思うが、少しでも弧月の近くにいたいと思う。
それに、大切な我が子を守るのならば守ってくれる弧月の側にいた方がいいのだろう。
そうして引っ越しを進めつつも穏やかな日々を過ごしていたある日、状況が一変した。
胎動だろうか。
悪阻も少し落ち着き、下腹部に何か動きのようなものを感じるようになった。
その感覚を不思議に思いながらも慈しみの感情を育んでいた美鶴の元へ、珍しくばたばたと慌ただしい足音が近付いて来る。
「み、美鶴様!」
「重大な知らせがっ!」
肌寒くなってきたため、母屋の方でいつもの手習いをしていた美鶴は慌てて庇から入って来た二人の妖狐を見る。
「灯、香! そのように走るなどはしたないですよ!」
「で、でも」
「本当に重大なのです!」
小夜に窘められても必死な様子で話す二人に、美鶴は落ち着くよう声をかける。
「落ち着いて。何があったの?」
落ちつくよう殊更穏やかに話しかけると、ふさふさの狐耳をピンと伸ばした双子は居住まいを正し声を揃えて告げた。
『主上が、もう一人妻を迎えるらしいのです!』