妖帝と結ぶは最愛の契り
「入内するのはどのような姫なのですか? どういった経緯で決まったのです?」

 弧月のおかげで落ち着けたため、自然と問いを口に出来た。

「……入内するのは左大臣・藤峰(ふじみね)の娘だ。莢子(さやこ)という」

 不機嫌そうな様子をそのままに、弧月は説明してくれる。
 本当に不本意なのだなと、つい苦笑を浮かべてしまった。

「元より後宮に姫を入内させろという声はいくつかあったのだ」

 だがそれは弧月自身がいらぬと拒否し続けてきた。
 歴代の妖帝の中でも特に妖力が強く、子が出来ないと言われていたからだ。

 しかし異能があるとはいえ平民の美鶴を妻に据えた。しかもその平民が懐妊したとなれば大人しくはしていられなかったのだろう。

「もしかしたら、妖力が強いと子が出来ないというのは迷信かもしれない。などとのたまう者が出始めた……全く、馬鹿げている」

 悪態をつく弧月からは本気の怒りを感じた。
 その怒りの所以(ゆえん)も弧月は語ってくれる。

「妖は本質的に気性が荒い。それは妖力そのものにも当てはまる」
「妖力そのものにも?」

 良く分からず首を傾げると、少し優しくなった声で弧月が説明してくれる。
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