妖帝と結ぶは最愛の契り
「つまり、妖力自体が暴力的なのだ。だから普段は力を抑え込み人と同じ姿を取っている」
「そう、だったのですか……」

 まさか成人した貴族がそういった理由で本来の姿を隠しているとは……。
 知らなかった美鶴はひそかにかなり驚いていた。

「そのような暴力的な妖力を受けて子を成すためには、それを受け止められる受け皿が必要になる。貴族の娘は自身の妖力を受け皿にして子を成すのだ。つまり受け皿である妖力が弱ければ受けきれず流れてしまうということになる」

 弧月の説明に(さかずき)が頭に浮かぶ。
 貴族の娘の妖力が杯で、殿方の妖力が酒の様なものだろうか。

 殿方の妖力が杯に溜まれば子ができ、杯が小さく溢れて零れてしまえばできずに流れ落ちてしまう。
 少々違うかもしれないが、大まかな雰囲気としては間違ってはいないだろう。

「つまり、弧月様の妖力を受けることが出来る姫はいないということですか?」
「ああ、そういうことだ」
「ですが、それではなぜ私は身籠ったのでしょうか?」

 異能持ちとはいえ受け皿になる妖力など持ってはいないというのに……。
 その疑問に、弧月ははっきり「分からぬ」と答えた。
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