その鬼は晴れやかに笑って、
 事情が変わったのは晴斗が現れてからだ。基本的には廉と行動をともにしている晴斗だが、彼は結希を気に入っている。人前ではまともな交流も出来ないため、数日おきに屋上で、時には朝臣を交えみんなで過ごす時間をとるようになった。

「ごめんね、なるべくこっちで食べたいとは思ってるんだけど」
「相変わらず熱心にボランティアやってんだ」
「うん、まあね。ボランティアっていうか委員会なんだけど……似たようなもんかぁ」

 特別執行委員会の、それが表向きの活動内容だった。

 突然出現する鬼に対応するため授業中に席を外すことなどについて、校内トラブルの解決やサボりへの注意のためという名目で教師生徒を納得させている。
 生徒が行うことではないように思えるが、生徒同士互いの成長を促す活動であるとしてこの学校では昔から保護者たちにも認知されているという。

 それら活動内容はボランティアと呼ばれることも多い。自分たちの授業時間を犠牲にしての奉仕活動ともなれば間違いではない。
 当然、出欠や試験の点数は幾分保証され、補習が行われることもあるなど、事情を知る学校側も配慮をしてはくれるのだが。

「そ、れ、にぃ」
「な、なに?」
「最近廉くんと仲良くなってない!?」
「そんなこと、ないよ?」

 川添の上目遣いなのにじっとりとした視線に、結希は笑ってみせるものの頬がひくりと引き攣ってしまう。泳いだ目が話題の当人を探すようにさ迷ったが、彼は今日も屋上で食事をしているはずで、そこにはただ空席があるだけ。

「りなはりなで相変わらずだね、そのミーハーっぷり」
「だあって結希ちゃん、Cクラスの桐生くんとも仲良しだしぃ。ずるいよぉ」

 呆れたように言う相沢の言葉に川添は頬を膨らませる。まるで姉と妹のようないつもと変わらないやり取りに、結希は唐揚げを頬張りながら微笑んだ。
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