その鬼は晴れやかに笑って、
鍵盤を叩きつけたかのような激しい音が降り注ぐ。
六限目、あと少しで一日の授業が終わるという油断を突くようにして現れた鬼は複数。呼応でもするのか、自意識など持ち合わせていないのだから示し合わせるなんてことはあるはずもないけれど、同時刻、近い位置での鬼の出現反応が捕捉された。特別教室棟の四階だ。
「まあ意思を持って示し合わせるなら、ばらけた場所に出てくるもんだろうけどね」
駆けつけた特別執行委員の手により、順々に小さなものからあらかた片付けられ、残るは音楽室から現れたと思われる鬼となっていた。ピアノに憑いているために姿は大きく音もうるさい。廊下などという幅のそうない場所ではより一層だ。
へらりとした表情を浮かべながら傍観を決め込む風の米倉は、メンバーの能力値の引き上げをはじめとした補助が主たる能力であり、司令塔の役割を担うため、大抵の場合壁を作り出す山本とともに脇に控えている。山本の壁はめくらましの他、防護壁にもなり、不意を突かれない限りは安全地帯と言えた。
「今日はさくっと終わらせてね、みんな」
この後、放課後には臨時委員会議が予定されていた。合唱部が音楽室を使用する時間に間に合わせたいということもある。余計な手間はかけたくないとの米倉からのにこやかな圧に、メンバーも素早い身のこなしを見せる。