僕らは世界にのまれてく。
夢なんて見てはいけない。現実だけをみて、どれだけ絶望してもひたすらに前に進むしかない。


そう、教わってきた。


シャン‥‥‥


シャン‥‥‥


シャン‥‥‥


音のなる方へ、空っぽな心を連れて前に前に。


「僕には何が出来るんだろう。もう、わからないや」


ただひたすらに歩き続ける。すると、どこからか声が聞こえてきた。


声のする方へ足を早め、次第には少し息が上がってしまう。


こんなにも誰かを求めたのは、初めてだった。


「ッハァ‥‥ハァハァ‥‥」


「ねぇ‥‥」


そう声を出した時には人の姿はなかった。


息を整えめいいっぱい叫ぶ。


「なんなんだよっ!‥‥‥」


僕の叫びは虚しく、時の止まった世界に消え去った。その声に託した僕の悲しみと、ただただ怒りに任せた感情はなかったものになる。


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