僕らは世界にのまれてく。


ダメだよ。僕、兄ちゃんといたいんだよ。


その言葉は、飲み込んだ。
そして、なかったものになる。


「そっか、そうだよね」


「うん。ごめん。だかさ、早く遊ぼうよ」


「‥‥うん」


二人並んで手を繋いで。
前に前に歩いてゆく。


「ねぇ、兄ちゃん 」


「ん、どうした。何か思いついた?」


兄ちゃんが生きていたら何をしたいか、毎日毎日考えていた。
ちっちゃな幸せを、ずっと思い描いていた。


「ブランコ一緒にしたい」


「え、ブランコでいいの?」


「うん、ブランコがいいんだ」


「わかったじゃあ一緒にブランコするか!」


一緒にって言える日が来ると思わなかった。
嬉しい。


それにしても、兄ちゃんは優しいなぁ。僕なんかと全然違う。


そう考えれば考えるほど、自分が嫌になる。



ブランコを漕ぎながら、そんなことを考えていた。

< 7 / 10 >

この作品をシェア

pagetop