僕らは世界にのまれてく。
ダメだよ。僕、兄ちゃんといたいんだよ。
その言葉は、飲み込んだ。
そして、なかったものになる。
「そっか、そうだよね」
「うん。ごめん。だかさ、早く遊ぼうよ」
「‥‥うん」
二人並んで手を繋いで。
前に前に歩いてゆく。
「ねぇ、兄ちゃん 」
「ん、どうした。何か思いついた?」
兄ちゃんが生きていたら何をしたいか、毎日毎日考えていた。
ちっちゃな幸せを、ずっと思い描いていた。
「ブランコ一緒にしたい」
「え、ブランコでいいの?」
「うん、ブランコがいいんだ」
「わかったじゃあ一緒にブランコするか!」
一緒にって言える日が来ると思わなかった。
嬉しい。
それにしても、兄ちゃんは優しいなぁ。僕なんかと全然違う。
そう考えれば考えるほど、自分が嫌になる。
ブランコを漕ぎながら、そんなことを考えていた。