君に抱いた恋心を記憶の中にそっとしまって。

そう言ったら遥陽は押し黙った。


無言の沈黙が2人の間に佇んでいる。


こんな形で終わるのは悔しいけど、しょうがないよね。



『俺も、ありがとう。これで最後にする。初恋の人が、初優で良かった。最高の時間を、ありがとう』


「っ……もうっ……遥陽の、バカァ……」



たまらず声に出してしまった。



『ははっ。初優に怒られたな』


「…………」


『それじゃあ……幸せになれよ。またな』



1番聞きたくない言葉が、突き刺さる。


幸せになれよじゃなくて、遥陽だから幸せだったのに……。



「う、ん……。遥陽も、幸せになってね。ごめんね。ありがとう」



“またね”、“バイバイ”なんて言葉は使いたくなかったから、“ありがとう”で終わらせたかった。



『……電話、切るね』


「うん」



長い沈黙の後、遥陽から電話を切った。


プー、プー……。


真っ暗な画面には泣き腫らした自分の顔が反射して写っている。
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