君に抱いた恋心を記憶の中にそっとしまって。

電話で聞いたことのある優しい声。


私は恥ずかしいと思いながらも顔をゆっくりと上にあげ、目の前に立っている男性を見た。


ードキン。



「は、遥陽さん……ですか?」


「そうだよ。メッセージでやり取りしていた遥陽です」



ドキドキしていた心臓がさらに加速して、息をすることを忘れてしまうほど見惚れてしまった。


写真では遥陽さんを見ていたけど実際会ってみるとやっぱりかっこいい。白いロングTシャツ、ジャケットを羽織、ジーパンを合わせている。


髪の毛はあまりセットしていないのがわかるけどそんなの違和感ないほど顔が整っていた。



「えっと……リアルで会うのは初めましてだから……軽く自己紹介でもする?」



遥陽さんはそう言って、私に聞いた。


私は反射的に頷く。自己紹介なんて今まで何回もしてきたけどちゃんと遥陽さんから聞きたくて。


気づいたら駅の外にあるベンチにお互い並んで座り、自己紹介し合っていた。
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