君に抱いた恋心を記憶の中にそっとしまって。

「それじゃあ、改めまして冷泉遥陽と言います。よろしくね」


「は、はい!よろしくお願いします」



男の人とリアルで話すのなんていつぶりだろう。思った以上に緊張してしまい、手に変な汗がにじみ出る。


そんな私をよそに、遥陽さんはニコニコと笑いながら私を見ていた。


……うっ。


あんまり私のことを見ないで欲しい……。


遥陽さんの視線がまっすぐ私を見ていて、目のやり場に困る。だけど、嫌な視線じゃなくて優しい視線だったから、私は目をそらさずにしっかりと遥陽さんを見た。



「え、えっと……羽衣初優です。よ、よろしく、お願いします……」


「あはは。そんな緊張しなくていいよ……って言ってもそれは無理だよね。俺も緊張してるし」


「え?」



緊張で噛み噛みな挨拶をすると遥陽さんはふわりと笑う。その笑顔を見てドキッとしない女の子はいないだろう。


多分、全女の子が惚れてしまいそうな破壊力抜群な笑顔だった。
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