幸せな音
 もうこうなったら自棄(やけ)だ。ちょっとくらい性に興味津々な女だと思われてもいいではないか。適当にいい感じのムードをセッティングして勢いに任せて求めてしまおう。人の良い優武の事だ、きっと無下にはしないはず。

 という事で優武を温泉旅行に誘った。何も知らない優武は無邪気に喜んでくれた。優武との初旅行。思えば優武と日を跨いで一緒に居た事は今までなかった。楽しみと下心がない交ぜになって、若干黒い笑みになったが優武は気づかない。

 ブログ等でリサーチした感じ、露天風呂付きの客室がある温泉宿が一緒に入れていいのだとか。思えば優武と裸の付き合いなどした事がない。想像しただけで耳まで熱くなる。いや、この程度で臆してどうする。頬を叩いて気合を入れなおす。

 多少値は張るのでどうかと思ったが、優武に提案したら予想外に喜んで即決してくれた。まさか優武も自分と同じことを……! と期待したがどうやらそうではなく、純粋に綺麗な宿、温泉、食事を楽しみにしているようだった。
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