幸せな音
 実は信愛だって楽しい。二人で下調べして、計画して、準備して、これだけでも充分楽しいのに旅行当日になったら一体どれほど楽しいのか。打算抜きで楽しみでしょうがない。

 旅行当日。移動は主に観光バス。優武と景観を楽しみつつ旅館に向かう。四時間の旅も優武と一緒だったら時間を持て余す事なくあっという間に目的地に着いた。

 温泉宿のチェックインは三時。荷物をコインロッカーに預けて優武と観光地を回る。ご当地の新鮮な魚介が盛り盛りの昼食。食べる前からわかる。これ絶対おいしいヤツ。最近ダイエットを頑張っていた事もあって多幸感がやばい。泣きそうになりながら頬張る信愛を優武が微笑ましく眺めている。

「ちょっと優武くん! 何かなその優しい目は! 違うから! 減量の反動でちょっと感動しちゃっただけだから!」

「何のことです? 僕はただ信愛さんと一緒においしいごはんが食べられるのが嬉しいだけですから」

「本当かなー」

「よかったら僕の分もどうです?」

「ほら食いしん坊キャラ認定してるじゃん! 一口で充分だから! ほら私のも食べるんだよ!」

「ははっ、それじゃあいただきます。うん、おいしいですね」
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