幸せな音
 今、すごくキスをしたいと思った時に息ぴったりで唇と唇が重なる。これってすごい事だと思う。思えば初めてのキスはこうではなかったように思う。お互いギクシャクして、タイミングも合わなくて、唇も上手に重ねられなかった。それがいつの間にかこんなにも自然にできて、一体感すら感じられるようになったのだから。

 焦らずとも二人の距離は二人のペースで縮まっているのかもしれない。優武の肩に頬を寄せてリラックスする。優武は信愛の頭に頬を寄せる。彼の隣にいられる事が今はこんなにも安心できる。

 お風呂でのスキンシップはここまで。背中の流しっこはまたの機会に。

 旅館の夕食はかなり豪華。何度もスマホで記念撮影。インスタもしていないのに「こればえるよね!」「ばえますね!」このはしゃぎよう。最高の料理に舌鼓を打って最後にお茶を飲んで一服するとちょうど二十時。就寝するには三時間は早い。さあ何をしようかという流れに。

「卓球でもどうですか? 確かラウンジでレンタルできましたよね?」

「えー、もっといい事しようよー」

「ええっ、何ですか? いい事って?」

「さあ、なんでしょー?」
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