幸せな音
「痛くないですか?」

「痛くないけど、すっごく気持ちいいけど、優武くん上手過ぎない? これプロの技術だよね!? どうして!?」

「あれ? 言ってませんでした? 三年ちょっとリラクゼーションでバイトした事があるんですよ」

「聞いてないよー!」

「じゃあ今度は反対側で」

 ヤバい、こんな手際よく揉みほぐされたら……。

「……ほんとに寝ちゃいそう」

「寝てもいいですよ?」

「いや寝ないけどねー!」

 心頭を滅却すれば大丈夫なはzzz――

「はっ!!!!!」

 えっ、どういうこと!? なんで、いつ消灯した!? 寝て!? 寝てた!? どれくらい!? 補聴器!!! ない!!! ああ優武が外して充電してくれたみたい!!! 優武は!!! うん、当然寝てるよね!!!

「……くそ、くそぅ、私ってヤツはどうしていつもこう……!」

 別にそのつもりはなかったがせっかくいい雰囲気だったのに、こう、何か重大なチャンスを逃したような得も言えぬ悔しさで歯軋(はぎし)りがおさまらん。
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