幸せな音
前回は取捨選択の結果泣く泣く諦めたあの店で昼食を済ませる。時間が足りなくて行けなかった名所を巡る。同じ旅行先でも前回と全然違った感動があるから不思議だ。

温泉宿にチェックインすれば早速客室の露天風呂で背中の流しっこをした。過去の自分に見せてあげたいくらいの豪快な裸のお付き合い。

夕食の後はもう一度シャワーを浴びて、ベッドでマッサージを代わりばんこ。前回と先後入れ替え。

「こちょこちょこちょ!」

「あははは! ちょ、くすぐるのずるいですって信愛さん!」

「だって優武くんマッサージ上手過ぎるんだもん!」

「そんな信愛さんも充分! あははは! もう勘弁してください! ははは! 降参、降参ですって!」

ベッドで心ゆくまでじゃれ合った後は、愛し合う。

「今日こそ優武くんをよがらせる!」

「ええっ!? なんでですか!?」

「だっていつも私ばっかり……なんだもん!」

「……あの、信愛さん、わかりにくいかもしれないんですけど、僕だって毎回すごく踏ん張ってるんですよ?」

「え? 何を踏ん張るの?」

「信愛さんが可愛すぎて……いえ、何でもないです、はい」
< 31 / 93 >

この作品をシェア

pagetop