幸せな音
母は信愛に縋りつくように抱きしめながら泣き崩れる。何故母はこんなにも取り乱しているのだろうか。信愛は状況が呑み込めない中、母が落ち着くのをただひたすら何も考えずに待った。はらわたにこびり付くような不安から逃避するように……。
乗車していた観光バスが事故を起こして信愛はこの病院に入院する事になった。母は絞り出すようにそう説明してくれた。
血の気が引いてめまいがする。動悸がする。過呼吸気味になる。変な汗が全身を濡らし、ガタガタと震えが止まらない。思わず顔を掌で覆うと自分の体の冷たさに驚いた。
「大丈夫信愛ッ……!」
「……ね、ねぇ、お母さん? 優武くんは? 優武くんは無事なんだよね……?」
母が黙って葛藤している。葛藤の理由を今は必死に考えないようにする。そんな事ない、あるわけない。
「だ、だってほら……! 隣に座ってた私がこんなに元気なんだよ……!」
母は悲痛に耐えるように目に涙を浮かべる。
乗車していた観光バスが事故を起こして信愛はこの病院に入院する事になった。母は絞り出すようにそう説明してくれた。
血の気が引いてめまいがする。動悸がする。過呼吸気味になる。変な汗が全身を濡らし、ガタガタと震えが止まらない。思わず顔を掌で覆うと自分の体の冷たさに驚いた。
「大丈夫信愛ッ……!」
「……ね、ねぇ、お母さん? 優武くんは? 優武くんは無事なんだよね……?」
母が黙って葛藤している。葛藤の理由を今は必死に考えないようにする。そんな事ない、あるわけない。
「だ、だってほら……! 隣に座ってた私がこんなに元気なんだよ……!」
母は悲痛に耐えるように目に涙を浮かべる。