幸せな音
「いやいや、やめてよお母さん、こんな状況でからかわないで。本当に優武くんの事が心配なの。同じ病院で入院しているんだよね? あっ、それともまさか入院するほどでもない軽傷とか? 私昔っから運悪いからさ、あはは」
信愛が空元気な笑みを無理やり浮かべると母は咽び泣きながら必死に首を振った。
「うそ……絶対うそ」
信愛はもう顔を上げる気力すら失い、力なく項垂れる。見開いた両眼から大粒の涙が堰を切ったように溢れ出す。
「……こんなの、悪い夢だよ……」
早く醒めて。目の前が真っ暗になるような絶望の中、それだけを切に願った。
乗客14人、運転手2人が死亡、他乗客24人が重軽傷を負った今回の観光バス事故。バスの運転手が大型車の運転に不慣れでフェード現象を起こし、坂を滑りながらカーブを曲がり切れずガードレールを突き破って崖に転落した、というものが事の顛末だった。
救急隊に発見された時優武は信愛に覆いかぶさる様に絶命していた。余程必死に信愛を守ろうと抱き抱えたのだろう。二人を引きはがすのは救助隊数人がかりでも苦労したという。
信愛が空元気な笑みを無理やり浮かべると母は咽び泣きながら必死に首を振った。
「うそ……絶対うそ」
信愛はもう顔を上げる気力すら失い、力なく項垂れる。見開いた両眼から大粒の涙が堰を切ったように溢れ出す。
「……こんなの、悪い夢だよ……」
早く醒めて。目の前が真っ暗になるような絶望の中、それだけを切に願った。
乗客14人、運転手2人が死亡、他乗客24人が重軽傷を負った今回の観光バス事故。バスの運転手が大型車の運転に不慣れでフェード現象を起こし、坂を滑りながらカーブを曲がり切れずガードレールを突き破って崖に転落した、というものが事の顛末だった。
救急隊に発見された時優武は信愛に覆いかぶさる様に絶命していた。余程必死に信愛を守ろうと抱き抱えたのだろう。二人を引きはがすのは救助隊数人がかりでも苦労したという。