幸せな音
こんなに頭も顔の形も変わってしまうくらい変わり果てた姿なのに、どうして横たわっているこの人が優武だってわかってしまうの……!?

「お願いだから返事をしてよ……!」

優武に縋りつく。粘土みたいに冷たい。キツい薬品の匂いがする。嫌だ、考えたくない。お腹を懸命に揺する。

「目を開けて、私を見てよ、ねえ……!」

 泣いても叫んでも揺すっても、何をしても優武は起きてくれない。

「いや、いやだよ、優武くん……! 何か言って! 私を独りにしないで!」

こんなの酷いよ。なんで何も言ってくれないの。なんで見てくれないの。

 母はもう見ていられなかったのか信愛を抱き締めて泣き崩れた。

「あああああああああああああああああああああ!!」

 信愛は母からもらい泣きしたが最後、気絶するまで優武を抱きしめながら泣き続けた。

 幸福と絶望の落差に心がついていけない。それからはずっと悪夢の中にいるみたいだ。醒めろと何度念じても醒めない。なんでこっちが現実なんだ。
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