幸せな音
優武は後悔と無念の涙を流しながら思念で何度も信愛に謝っている。優武は何も悪くないのに。景は優しく笑いかけてその涙を拭ってやる。信愛が待ち望んでいるのは懺悔の言葉ではないよ。

『優武さん、さあ私の手を取って、そのありったけの愛情を信愛さんに届けに行こう!』

現世で信愛が景の手を取るタイミングと幽世で優武が景の手を取るタイミングがシンクロする。景の波長を懸け橋に、優武の心と信愛の心を繋げる。優武の魂が景の中を駆け抜けて信愛の魂へと飛びこんでいくのがわかる。

『信愛さん、愛してるっ……!』

「優武くん……! どこっ!? どこにいるの優武くんっ!!」

「届いた……」

 景は思わず安堵の溜息を溢して脱力する。

「桜守さん、なの……? 今、何をしたの?」

「聞こえた? 優武さんの声?」

 信愛は目を剥くとボロボロと大粒の涙を溢す。全身が小刻みに震えているのは、暗闇の中であっても光明の片鱗を感じられたからだろうか。

「な、なんで……優武くんのこと……!」

「彼はずっとあなたの傍にいるよ、ずっとあなたの事を愛していて、ずっと心配しているよ……?」

「……本当、なの?」
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