幸せな音
 優武とLINEで日程調整を済ませ、いざデート当日かなり気合を入れた。アドバイザー曰く気合を入れてもいいが、カジュアル目な装いを意識するのがベストらしい。化粧はナチュラル、補聴器はイヤリングのようにおしゃれに、髪は前日に美容院で整えてきた。

 いよいよデート当日。実は舞い上がっているのは信愛だけで、優武は食事の付き添い程度の軽い気持ちで誘ってくれただけだったのかもと不安になってきた。しかし予定時間よりも早く待ち合わせ場所に到着していた優武の服装を見てそんな不安は吹き飛んだ。

 靴から上着まで明らかに新品の服、きっちり整えられた髪は直前に美容院に行ってきたようだ。優武も信愛と負けず劣らず気合を入れているのが伺える。ああ、よかった。これはデートだ。優武が勇気を振り絞って誘ってくれたデートだ。優武もきっとこの日を楽しみにしてくれていたんだ。それだけで泣きそうになるくらい嬉しかった。

「早稲田さん、とても素敵で驚きました。今日はよろしくお願いします」

「あ、ありがとうございます。相良さんも、その、普段と全然雰囲気が違ってかっこいいですよ!」
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