幸せな音
「突然すみません! でもお願いします! もう少しこのままで!」

「はっはいぃ!」

 暴走した思いだけが急いて止まらない。今すぐこの思いを君に伝えたい。振られるとか交際できるとかもうどうでもいい。彼女の手を引いてベンチの方へ行こう。街灯があるから。もっと明るい方へ。君の顔がもっと見える方へ。

「早稲田さん、いや、信愛さん……! 好きです! 僕とお付き合いして頂けないでしょうか!」

 ああ、言った、言ってしまった。心臓が悲鳴を上げんばかりに脈打っている。これは彼女の返答如何によっては死ぬな、と冷静に分析している自分がいる。

「私も……! 私も優武さんが大好きです……!」

 え……? 嘘だ、今なんて……? だって僕だぞ、異性としていいところなんて何一つない僕がそんな。……ああ、信愛さんが僕を抱き締めてくれる。止めどなく湧き出る愛おしさと彼女の温もりが夢じゃないぞと教えてくれる。感極まって止めどなく涙が溢れる。

「……信愛さん、僕、本当にあなたを愛して……愛しているんです……ずっと前から……!」

 彼女を抱き締めながら、みっともない涙声でずっと抱えてきた思いを吐露してしまう。
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