幸せな音

早く家族になって、聞こえるうちに僕と信愛さんの子供の声を聞かせてやりたいなんて、何様なんだ僕は。僕と結婚をして、家庭を作って、子供を二人で育てて、それが彼女の幸せだと勝手に決めつけるなんて思い上がりも甚だしい。

結婚も子供も彼女が望んでくれているかなんてわからないくせに。自信があるわけじゃないくせに。

こんなのはただの幸せの押し付けかもしれない。それでも僕は世界で一番愛している信愛さんの為に何かしたいんだ。



いつも抱えきれないくらいの幸せをもらってきた。僕ばかりもらってばかりで、僕ばかり得をしていた。僕だって少しくらい彼女に何かを返したい。僕、頑張るから。一生をかけて、人生の全てを捧げてでも君を幸せにしてみせるから。だから信愛さん、僕と――

「――僕と結婚してください」

「えっ、今、なんて……」

わかるよ、聞こえなかったわけじゃないだろ？　僕は本気だよ。懐から指輪を取り出してもう一度言う。

「僕と、結婚してください」

　信愛さんは目を丸くして、震える手で僕の手を包んで泣きそうな顔で言う。