幸せな音
「……早すぎるよ……こんなの酷いよ、まだ大事な事全然伝えきれてないのに……!」

 いやだよ、また優武くんとお別れしなきゃいけないなんて絶対いや……!

「……ねえ、優武くん、一生のお願い……!」

 信愛は優しく抱きしめてくれる優武に懺悔し許しを請うように泣き縋る。

「私も優武くんと同じところに行っていい……?」

 私が自殺をしたらきっと優武くんは自分のせいで私が死んだって泣くに決まっている。私はなんて身勝手で酷い女なんだ。優武くんをまた喪う悲しみに堪えられないから、優武くんを悲しませるとわかっていて、それでも自殺をしたいと心から望んでいる。

「信愛さん、無理してどこかに行こうとなんてしなくていいんだよ?」

 優武は慈しむような顔で笑いかけると優しく信愛の涙を拭ってから額と額をくっつける。

「僕はずっと信愛さんの傍にいるんだから」

「でも私には景ちゃんみたいな不思議な力はないから、優武くんがどこで何しているかなんてわからないんだよ……?」
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