幸せな音
「本当に今まで何も感じなかった? ふとした時に僕の気配を感じる時は全くなかった? よく眠れた日の朝は僕と一緒に居たって感覚が残っていなかった? 夢で一緒に笑い合った瞬間が心に焼き付いていた事は、一度もなかった?」

「うああああああああ……!!」

 信愛はもう一度優武の胸の中で泣き崩れる。あれは気のせいなんかじゃなかったんだ。悲しみのあまりおかしくなったんだと思い込んでいた。

「大丈夫だよ? 寂しい時はいつだって君の手を握っているから」

 ……本、当……?

ここが思念で通じ合える世界でよかった。泣き声しか上げられなくても、心がちゃんと優武に語りかけている。

「ああ、勿論だとも。涙が止まらない時はいくらでも抱きしめるからね」

約束だよ……?

「信愛さん、忘れないで。信愛さんが笑っている時は僕も隣で笑っているんだって。ごはんがおいしいって思ったなら、それは僕もおいしいねって語りかけているんだって。気持ちよく眠れているなら、それは夢で僕と楽しく過ごしているんだって」
< 69 / 93 >

この作品をシェア

pagetop