幸せな音
 でも今はその言葉を聞くと胸が切なくて苦しい。どんなに信愛が望もうと、どんなに優武が望んでくれようと、もう優武の子を産めるチャンスは二度と来ないのだから。

「この子が産まれたら、また三人で来ようね?」

 優武は宝物に触れるようにそっと信愛のお腹を撫でる。

 え? この子?

「僕にも支えさせてね?」

 なんて優しい顔で笑うのか。まるで朝日の光みたいだ。いや、見惚れている場合じゃない。信愛はさっきの言葉の真意を訊こうとして。

「………………」

 目が覚める。夢で優武と会えた確信があって嬉しい。寝惚け眼で天井をしばらく眺める。カーテンの隙間から朝日の光が細長く伸びていて、天井に光のレーンがかかっているようだ。

あれ、そういえば……。

 信愛は飛び起きる。なんで今まで気づかなかった……! 生理が来ていない。事故に遭ってから一度も。

 キャビネットの引き出しをひっくり返して妊娠検査薬を慌てて探す。確か買っていたはずだ。あった!

 そのままトイレに駆け込んで妊娠検査薬を使う。

「あああぁぁッ……!」

 奇跡を目の当たりにして泣き崩れる。陽性だ。

「優武くん……!」
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