幸せな音
11週目を過ぎたあたりのある日腹痛と不正出血が丸一日続いた。まさかこのまま流産になってしまうのではないか。担当の産科医が妊娠初期にはよくある事だから大丈夫と宥めてくれたが、これが流産の結果として起こる場合もあると優武が読んでいた本に書いてあった。
滅茶苦茶怖い。もし切迫流産とかだったらどうしよう……。まだ11週くらいだと経過観察しかできる事がないと担当の産科医に言われた。
「優武くんお願い、赤ちゃんを守って……!」
気持ち悪い、お腹痛い、頭痛い、流産怖い。ああ辛い、寂しい、涙が止まらない。
「……助けて優武くん」
優武を喪い自暴自棄になって、ろくに眠らず、まともな食事を取らなかった時期がった。それも何日も。どうしよう、それが原因で流産になってしまったら。……赤ちゃんと優武に申し訳ない。
「……赤ちゃんを守って……お願い……」
信愛は背中を丸めてお腹を抱えるようにして、優武に祈りながら床に就く。
はっ……今、寝てた……?
信愛の膝枕の上で優武が寝ている。ふふ、なんて可愛い寝顔。起こさないようにそっと頭を撫でる。寝息がくすぐったい。幸せ。ずっとこうしていたい。