幸せな音
「怒ったのでキスをします」

「はい!」

 ん、怒っているわりには優しいキスだなぁ。

「どう? 反省した?」

「うーん、もう少し」

「反省しない信愛さん可愛い」

 濃厚なキスを堪能してホクホク顔の信愛。蒸気した頬を手で冷ましながら余韻(よいん)に浸っていると優武が信愛のお腹に耳を当てる。温かくて心地いい。信愛はされるがまま優武が顔を上げるのを待った。

「信愛さん、何も心配いらないよ」

「本当っ?」

「うん、お腹の子は元気だよ」

「よかったー……」

 信愛は泣きそうになりながら安堵の吐息を溢す。

優武は優しく微笑むと信愛の頭を丁寧に撫でる。安心したら眠たくなってしまう。幸せなのに少し残念。もっと優武とお話していたいのに……。

 目が覚める。腹痛も治まって体調も昨日よりずっと楽だ。出血も止まっている。

「優武くん、ありがとう……」

いつも(そば)にいてくれて。いつも思ってくれていて。優武のおかげでこれからも頑張っていけそうだ。

信愛は夢で優武が耳を当てていたところのお腹を摩ってみる。お腹は全然出てきていないけれど、子宮が少し大きくなっている気がする。
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