幸せな音
一、二回目と赤ちゃんの体勢が悪く判断を遅らせていた産科医が三回目の検査でついに判断を下した。「80%の確率で男の子です」。喜ぶ両親。しきりに80%を強調する産科医。ごめんね、先生。もし間違っていても両親には何も言わせないから。

 赤ちゃんの聴覚が出来上がる頃なのでいっぱい話しかけてあげてくださいと産科医に言われた時は嬉しかった。毎分話しかけちゃうけど大丈夫ですか?と真顔で言うほど。

 そろそろ適度な運動が必要な時期だと優武の本に書いてあった。産科医の許可が下りたのでマタニティヨガに通ってみる。体調不良が緩和されて満足。マタニティスイミングも気持ち良くて素晴らしい。何より通っているたくさんの妊婦たちと交流できるのがいい。同じ新米ママとは不安を共有し、先輩ママの体験談はメモして参考にした。

 そしてついに我が子が胎動を始めた! お腹を蹴られたら指でコツコツ叩いて返事だ! 蹴られる回数がだんだん増えてきて嬉しい。

 ある晩夢を見た。

 優武は大きくなった信愛のお腹に一生懸命耳を当てて赤ちゃんの胎動を感じようとする。
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