幸せな音
信愛もその時代に生きていたら不妊手術を強制されて歩生を授かる事ができなかったのだろうか。
悲しくなる。心細くなる。まるで世間から子供を産んではいけないと言われているみたいで、得も言えない罪悪感に苛まれる。
でも心のどこかでこの法案を排斥しきれない自分がいる。だって信愛のこの難聴は遺伝性のものだ。祖先から受け継がれ、生まれた時にはすでに冒されていた不治の病だ。この苦しみをどこかで断ち切らなければならないと思った人が立ち上げた法案なのかもしれない。
信愛も何度嘆いたかわからない。どうして普通の身体に生まれてくる事ができなかったのか、と。
もしもこの難聴が歩生に遺伝してしまったらどうしよう。たとえ歩生は大丈夫でも孫は? その子供は?
信愛の身勝手な願望のせいで最愛の息子達に同じ嘆きを上げさせるのか。あまりにも罪深い。本当は信愛に子供を産む資格なんかなかったのではないか。
優武が不意にテレビをきった。
「信愛さん大丈夫……?」
「……うん、でもちょっと考えちゃって……もしも私の病気が歩生に遺伝しちゃったら可哀想だなって……」
悲しくなる。心細くなる。まるで世間から子供を産んではいけないと言われているみたいで、得も言えない罪悪感に苛まれる。
でも心のどこかでこの法案を排斥しきれない自分がいる。だって信愛のこの難聴は遺伝性のものだ。祖先から受け継がれ、生まれた時にはすでに冒されていた不治の病だ。この苦しみをどこかで断ち切らなければならないと思った人が立ち上げた法案なのかもしれない。
信愛も何度嘆いたかわからない。どうして普通の身体に生まれてくる事ができなかったのか、と。
もしもこの難聴が歩生に遺伝してしまったらどうしよう。たとえ歩生は大丈夫でも孫は? その子供は?
信愛の身勝手な願望のせいで最愛の息子達に同じ嘆きを上げさせるのか。あまりにも罪深い。本当は信愛に子供を産む資格なんかなかったのではないか。
優武が不意にテレビをきった。
「信愛さん大丈夫……?」
「……うん、でもちょっと考えちゃって……もしも私の病気が歩生に遺伝しちゃったら可哀想だなって……」