幸せな音
 はわわわ恥ずかしい、でも嬉しい嬉しい。優武、まだ酔っているのだろうか。俯けていた顔を少し上げて優武の様子を伺うと顔を真っ赤にして恥ずかしそうだ。これは素面の反応と見た。

「それじゃあ、その、お願いしても?」

「は、はい、喜んで……」

 さっきまでの勢いが嘘のように恥ずかしがっている。可愛い。優武は本当に面白い人だ。

 この人とずっと一緒にいられたらきっと毎日が楽しいだろうな。

 車内は空いていてロングシートに座り放題だ。他の乗客の迷惑にならないよう会話は控えめだが、こうして隣りに座っているだけでドキドキしてしまう。どんどん優武が好きになる。

 最寄り駅から家までは普通に歩いて十五分くらい。好きな料理は何か。趣味は何か。休みの日は何をして過ごしているか。そんな他愛のない話をして、いつの間にか家の近くの公園に。

 できるだけゆっくり歩いていたつもりなのに、もう終わりか。早すぎる。お願いすれば優武はもう少し散歩に付き合ってくれるだろうか。

「早稲田さん、そこの公園で少しだけお散歩しませんか?」

「ええ!? いいですよ勿論⤴⤴⤴」

「す、すみません、こんな夜分遅くに、その、あまりに素晴らしい景観だなって」

「行きましょう行きましょう! よかったら案内しますよ! なんたってここの公園私の庭みたいなもんですから!」
< 9 / 93 >

この作品をシェア

pagetop