氷の女と呼ばれた私が、クソガキ御曹司に身も心も溶かされるまで。

第1話






「あなた、ウチの息子と見合いしませんか。」と、私の眼前に座る男が何の前触れもなく言った。

私は男の顔を見ず、手元のタブレットに目を落としたまま答えた。

素っ気ない声で「息子と仰いますが、何番目の御子息ですか。」

「14番目の息子です。」

「14番目と言いますと、ハリウッドで大根役者をやっている彼ですか。今年も見る者を圧倒する棒演技で、ゴールデンラズベリー賞間違いなしと言われている。」

「彼は16番目になりました。最近、息子を3人認知しましたので。」

その聞き捨てならない情報に、私もようやくタブレットから目を上げる気になった。

スケジュール調整の作業を中断し、テーブルの向こうに座る男を軽く睨みつける。

「…またですか。一体、この世界にあなたの子供は何人いるんです。」

「私が把握している限りでは、現在息子は24人、娘は18人です。」

それから、薄い唇を不気味に歪めて「まだ誕生していない者も含めれば、息子は26人、娘は19人。」

誤解のないように言っておくと、これは笑顔である。

『我が子の誕生が待ち遠しくて仕方がない』という感情を彼なりに表現しているのであり、決して車に轢かれてぺっちゃんこになった蛙の顔真似をしているわけではない。

高層ビルの最上階にある執務室に、私の暗い溜息が落ちる。

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