天才魔法使いは意地っ張りな努力家魔女に恋をする

13話 悪者で構わない



「良かったわねぇ、プレゼント、受け取って貰えて」

背筋が凍る。見られていた。

「…アメリ」

「普通は、彼女が出ていったら追いかけるのよ。ほんと、女心を分かってない。しかも、いきなり浮気?呆れた。最低ね」

「そうだね、ごめん。僕は最低だよ。だから、別れよう」

僕がそう返すと、アメリはより一層声を荒らげて僕に詰め寄った。

「はぁ!?何言ってんの!?」

「僕じゃ君の理想を叶え続けられない」

「どうしてそうなるの?ちょっと喧嘩したくらいですぐ別れるって!ていうかそのプレゼント、本当は私のために用意してたやつなんじゃないの!?適当な女にあげたりしないでよ!」

「適当じゃないよ。だから別れよう」

僕が歩き出すと、アメリも怒りながら着いてきた。

「ねぇ、嫌だってば!!なんなの?あの子、よりにもよってオリビアじゃん。あなたをいつも……睨んでる子!!」

渡り廊下の途中で、僕は立ち止まった。

「知ってるの?」

魔法学では2人とも同じクラスだけど、人数が多いから顔と名前が一致しない生徒もいるのに。

「有名よ!あなたみたいな天才をいつもライバル視して、喧嘩ばかり売ってる変な子。みんな言ってるわ。身の程知らずもいい所ね」

アメリは図書館の方を一度振り返り、思い出したように笑った。

「ふふ、あんな寂しい場所で必死に勉強してたんだ。1年の時、天才とか言われて当然みたいな顔してたクセに。前は何でも1番だったかもしれないけど、ハヤト君には勝てっこないのにね」

「それは分からないだろう」

僕が言うと、アメリアはさらに笑い出した。

「何よ、ムキになって。本気で言ってるの?あなただって分かってるでしょ、レベルが違うのよ。ちょっと頭がいいからって調子に乗って、無駄な事しちゃって。バカみたいね。私は別の所で努力しているわ。自分に出来る事を分かってる。女を磨いて、いつだって身だしなみを整えているのよ。ていうかあの子、休みの日なのに制服で来てたじゃん。不思議」

「…確かに君は、そうだね。君はいつでも綺麗だ。凄い事だと思うよ」

ただ僕が、彼女が泥臭くもがく姿の方が美しいと思っただけだ。例え僕に届かなくとも。上辺っ面の褒め言葉が貰えなくても。

「でしょう?それに、私はあなたの才能を認めているわ。あなたを尊敬しているから、無駄に張り合ったりしない。嫌でしょ?自分より遥かに格下なのに、あんな風にライバル視されるの。性格も悪そうじゃない。その内嫌がらせでもしてきそうだわ」

「…………」

「なのにまさか、あんな子が、私よりも好きだって言うの!?」

「そうだ」

僕はひと言伝えると、アメリの反応を見ずに、横をすり抜けた。

「待っ……」

振り返らずに歩き続ける。

「待ちなさい!!」

後ろで声がしたが、無視して宿舎へ戻る。

僕ははっきりと自覚した。オリビアが好きだ。



< 13 / 14 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop