天才魔法使いは意地っ張りな努力家魔女に恋をする
7話 可愛い恋人
アメリは、今までで1番積極的な子だった。僕を愛し、優しくしてくれる。僕の成績を凄いと褒めてくれるのも本心だと思う。意地も張らないし、いつも笑顔だ。顔も悪くない。僕の為に綺麗でいようと、化粧やファッションを研究し、努力してくれる。僕は、彼女を好きになろうとした。
でも、彼女に触れる事は出来なかった。今まではそんな事無かったのに、触れようとすると、どうしてもオリビアの事が浮かぶ。僕はオリビアを好きなのか?
だがあの子の気持ちは分からない。好きだと言ってくれるアメリの方が、絶対に一緒にいて満たされるだろう。僕はアメリの方が好きなはずだ。揺れる僕を、アメリは都合よく解釈した。遊び人って聞いてたけど手も繋げない、意外とシャイな人なのね─────と。
***
アメリと街をぶらついた。あちこちが、緑や赤に彩られている。そういえばもうすぐクリスマスだ。
「ねぇ、ハヤト君。クリスマス、どうする?」
隣を歩くアメリが、ツリーをうっとりと見上げながら言った。
「ああ、部屋でパーティーする?」
「あ…うん。それもいいけど、なんかもっと…」
「?じゃあ、街の上の空でも飛んでみるかい。夜は特に綺麗だと思うよ」
「いいけど、高い所って寒そうね……」
アメリは賛成するものの、どこか不満そうだ。チラチラと僕を見ては、ほら、もっと、あるでしょう?という顔をする。僕は頭をフル回転させて、女の子が好きそうなデートプランを考え直した。
「…じゃあ……イルミネーションが綺麗な場所を歩こうか。カップル限定メニューのあるカフェも探しておくよ」
「えっ、いいの?嬉しい!私、そういうキラキラした感じ、大好きなの」
僕の提案にようやく満足したらしいアメリは、パッと顔を明るくさせた。それならそうと早く言えばいいのに、アメリは僕の言葉を待つ。彼女が時折見せるこんな所が少し苦手だった。でも、怒る程でも無いから難しい。
ポケットに手を突っ込んで歩く僕の腕に抱きつき、アメリは機嫌良くニコニコと笑いかけた。
「楽しみ!ハヤト君のためにいっぱいおしゃれしなきゃね。ねぇハヤト君って、どんな雰囲気が好きなの?大人っぽいやつ?それとも、可愛い感じ?」
きっと「何でもいいよ」と言うと納得してくれないと思った僕は、目に付いた服屋のウィンドウに映った流行りらしきコーディネートを指差した。
「僕はああいうのが好きかもしれないな」
適当に言った割には、マネキンは本当に僕好みの服装をしていた。白いコートの下には、ワンピースにブーツ。僕はとことん女の子らしい格好が好きみたいだ。
そういえば私服姿って見た事無いな。あの子はこんなもの着るんだろうか…………
「可愛い、ハヤト君こういうのが趣味なんだ。いいよ。持ってる中に似たようなのあるから。クリスマス、おめかし頑張るわね!」
「え?あ、ありがとう」
無邪気に笑う彼女に我に返り、僕も笑顔を向けた。僕とのデートを楽しみ、僕のために着飾るアメリ。こうしてみると可愛らしい気もする。そうだ、アメリは、可愛いんだ…。